赤い靴なんて観たことも聞いたこともない

こんにちは。ひくこです。

すごく久しぶりに劇団四季「コーラスライン」を観た。
シンプルな衣装、舞台装置で休憩なしの2時間半は正直観る人を選ぶかもしれないが私はとても好きな作品。
ブロードウェイのダンサーのオーディションを描いた作品で、まあだからアメリカ色が強いもので日本人がやると???という感じは否めない。しかしそれを補って余りあるだけの魅力のある作品だと思う。
劇中のナンバー、思春期の性や家族関係の悩みを赤裸々に描いたMontageはいつ観てもナンバーの持つエネルギーに圧倒される。単にカラオケが大音量だからという訳ではないだろう。
やり場のない怒りや悲しみ、戸惑いがいい大人になったキャストの歌ダンス台詞によって爆発し、劇場全体を圧巻する。特に「全て不安ばかり 子供か大人か」というところはカタルシスすら覚える。最高のナンバーだ(完全に私の贔屓目なのだろうが)。
バックステージものだからこそ(?)のちょっとくさい綺麗事なんかもあったりするけど、愛した日々に悔いはない(What I Did for Love)はいつ聴いても沁みるものがある(原詞のほうが遥かに良いのは百も承知だが)。夢を諦めなければならない時、私もやってきたことに悔いはないと言えるだろうか。そんなこと。
キャストはまあ前回公演の新人投入してみました!祭りに比べたら格段に良い。しかし何人かどうにもいただけない台詞回しの方がいらっしゃった。誰とは言わないが。
先月『夢から醒めた夢』で何ともシニカルな夢の配達人を演じていた道口瑞之さんは今回は捻くれ物のボビー。捻くれ者というより、抱え込んだ闇をはぐらかすために道化に徹してるようだと道口ボビーで初めて思った(陽気なキチガイの丹下さんボビー、カラッとした変人の竹内さんボビーも嫌いじゃあないが。特に丹下ボビーはまた観たいと思っている)。しかしこの人は本当に上手い。ダンスは「!?!?」だったりするところもあるのだが(しかしキレッキレ)、どうしてもダンサーの多くなってしまうキャストの中で1人、ズルいくらいの歌声と音楽的ですらある台詞回しとで客席をあっと言わせていた。私だけかもしれない。いやそんなことはない。まあただの贔屓目である。そして表情がよく動く。よく動くなんてもんじゃない、あり得ない動きをする。最高。この調子で50歳くらいまでライン上のメンバーとして活躍して、その後はザック演ってくれないかな、というのはファンの欲目というもの。在団していれば演るかな。
坂田さんのキャシーはまあ女性トップダンサーのだけはある。文句なしの踊りっぷりであった。歌も前回よりずっと声が出ていた。声は?であるけど声量はある人だ。
意外と良かったのが谷口ディアナ。あんまり声の出る人ではない印象だったのだが、NothingやWhat I Did for Loveは高音も地声で張っていて、芝居も鼻につく優等生感がないのが良かったと思う。
あとは増本シーラ、高野コニー、相原ジュディ、山本マークなんかが目立って良かった。田中さんは前任の田邊さんの怪我(?)で急遽ポールに入っていた。2年近くのブランクがあったからか、独白では少し詰まったり天の声が入ったりはしたが、急遽にしてはよく取り戻せていた。上からでごめんなさい。前夜に一睡もしていなかったけれどポールのシーン、眠くならなかった(寧ろヒヤヒヤしていた)。
鳥原さんのヴァルの芝居は好きだが、歌は地声でもっと頑張って欲しいところ。
今回は声の出ている人が多かった。ただ余裕を持って演じすぎているかもしれない。もっと逼迫してなんとか仕事を得ようとするダンサーの苦しみが出てもいいだろう。その点、キャシーは素晴らしく良い。

とまあこれだけ好きな演目で好きなキャストが揃っていると語り倒してしまうのでこの辺りにして、同じ記事で書こうと思っていた彩の国シェイクスピアヴェニスの商人』はまた次回に譲ろうと思う。
Twitterでフォローしている人には何のこっちゃよう分からん内容になっているのはご容赦願いたい。